インクルージョンボックス

私の内包物をつれづれと

The Mix-Up TRANS トランス 観劇感想

2017年11月11日、シアターブラッツにてTRANSを観劇してきました。
小劇場は久々でくらくらした。3人芝居のストレートプレイ、めちゃくちゃ面白い舞台だった。見た後あまりに疲れ果てて、帰ったら5時間ぐらい寝落ちしてた(笑)
友達が、小劇場は大劇場にない没入感が良いって言ってたけどほんとそれって感じ。閉塞的で逃げ場がないから。

【あらすじ】
フリーライターの雅人(本田礼生)。精神科医の礼子(桜田聖子)。おかまの参三(大石敦士/小山蓮司)。
3人は高校の同級生。何年かぶりに雅人が礼子の病院を訪ねたところから、再び交わる3人の人生。
離人症にかかった雅人は、ときおり意識が天皇に変貌してしまう。
偶然出逢った参三は、そんな雅人を献身的に支え、愛していく。
動揺しながらも、冷静に医者として、できる限りの対処をする礼子。
「自分が自分でないような感覚。トランス-TRANS-。」
それは、雅人だけではなく、もしかすると礼子自身そうかもしれず、参三にすら起こりうる事かも知れない・・・。
http://www.stagecompany.co.jp/trans/ 公式HPより引用 

本田礼生くんのストプレ、すごく良かった。ストーリーがすごく面白いし、彼の演じる雅人の純白の衣装がすごく似合ってて透明感があって浮世離れしてて天使みたいだった。キャストのなかで彼一人、年若い青年だったので、最初見ながらこれって雅人はすでに死んでいて、礼子と参三の高校時代の幻想なんじゃないか、だから彼だけ若い容姿なんじゃないかって思ってた。変な話、それももしかしたら完全な間違いじゃないのかもしれない。

こっち側とあっち側の境界線、自分と相手の境界線、妄想と現実の境界線、自分ともうひとりの自分との境界線、全部曖昧で事実はなくて解釈だけがある。3人の登場人物のそれぞれに主観があって、その主観が入り混じるとどれが本当なのかわからなくなるんだけど、どれも本当かもしれない。全部嘘かもしれない。だって全員自分が都合のいい夢の中にいて、それを主観で語っているだけなのかもしれないから。最初の白衣を3人で取ろうとして譲り合うようなシーン、結局礼子が手に取って羽織ったから、礼子が医者のシーンつまり礼子の主観から始まったのかもしれない。
もう一人の自分が見ているっていう意識は、離人症じゃなくても持っている人が多いんじゃないかって思う。自意識とか罪悪感とかってもう一人の自分が見ている感覚だと思う。
かわいそうにって思うのと、愛してあげることは似てるし、愛されたいことと許されたいことも似てる。誰でもいいから愛してほしいのも本当だし、この人に愛してほしいのも本当だ。殺しちゃうのも愛だし、本当のことを話すことも愛だし、嘘のままでいいのも愛だ。
3人でいることをやめたかったのは誰で、3人でいたかったのは誰で、それに気づいてなかったのは誰で、それに気づいてたのは誰なんだって思うとそれは全員で、妄想でも一緒にいたくて一緒にいられなくて、だから壊れてしまったのかもしれないし、それすらも妄想で3人仲良く自殺してたのかもしれない。
誰かのために何かをしてあげるというのは強烈な快楽で、それによって自分の存在意義を保つくらいの依存性があるんだと思う。それは利他的なようでいて、ものすごく利己的な行動で、自分のために他のふたりを閉じ込めるように愛してしまうんだなあと思った。それは空の器を愛してるのと一緒かもしれない。
満たされないから余計にがむしゃらになるし、がむしゃらになるほどにまた空っぽになる。
真実であることと幸福であることは別物なんだけど、でも本当だったらいいなって思うのも嘘じゃない。真っ白であることは美しいけど本当かはわからないし、黒やグレーであることが偽物とは限らないんだなあ。雅人はずっと白くて、礼子は白衣を着ると白く脱ぐと黒とグレー、参三は黒とグレーだった。
熱中しながら感じる思考の混乱は酩酊と似てるので、まさにトランスという表題にふさわしい舞台だったなあ。本当に面白かった。都合がつかず一度しか見られなくてそれが唯一心残り。あの結末を知ったうえでもう一度見られたら、また違う感想や感情が生まれたと思う。

すごーくわがままで自分本位な物言いになるけど、礼生くんのストプレがあまりにも面白くて最高だったし、以前見に行った隼くんの主演舞台の口紅もめちゃくちゃ色々考えてぐるぐるして面白かったから、いつか隼くん礼生くんが共演する時が来たら、こういう色々考えて苦しくなるような舞台が良いなあと思った。

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