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十二月大歌舞伎 第三部 瞼の母 楊貴妃 観劇感想

2017年12月5日、歌舞伎座にて十二月大歌舞伎 第三部、瞼の母楊貴妃を観劇してきました!
ミーハー野郎なので玉様の楊貴妃なんて美しいに決まってるじゃん行くって感じで決めたので、一幕の瞼の母は完全ノーチェックで見事に涙腺を壊されました。
私が無知なだけで有名な作品なんだけど、下手に予備知識無しで見られてよかった。

 
生き別れた母子の再会、環境や立場の違い、思慕のすれ違い。思惑と感情がぶつかりあう、中車と玉三郎の熱い舌戦とも言える演技がすごかった。
母親も今の幸せは死にものぐるいで手に入れたものだから、なんとしてでも守りたいし、ずっと昔に死んだと思っていた子供よりずっとそばにいた子供の方により思いが強くなるのは当たり前だし、生き別れたあと一人で生き抜いてきた子供だって死にものぐるいで唯一生きてることだけは噂で聞いている母に思いが募るのは当たり前だ。どちらが悪いわけでもなく、タイミングと立場が噛み合わなくなってたんだよな。一度すれ違ったらそう簡単に交わりはしない。
痛々しいぶつかり合いみたいな話し合いの後、ほんの一時兄妹が相見えたとき、そこにどちらも母の面影を見るのがすごくグッと来た。似てるなあと涙声でつぶやいた忠太郎に涙が出た。
ラストシーンが本当に静かで物悲しい。母おはまがやっと忠太郎への思慕が追いついたけれど、もうすべてが遅かった。会いたくなったら目をつぶろうよ、それでいい。瞼の裏には自分を傷つけない母がいる。

そしてもともとの本命、楊貴妃がもう素晴らしかった。
この作品は、長編詩「長恨歌」と能の「楊貴妃」を題材にした舞踊で、作家の夢枕獏坂東玉三郎のために書き下ろした作品。(チラシより抜粋)
話自体がすでに楊貴妃が亡くなり蓬莱に住まう天女になってる所からだったから、玉様のご登場で本物の天女様のご降臨という感じだった。
指の先、衣装のゆらぎ、床につきそうなくらい長い御髪のなびく様、何をとっても幻想的で完璧なまでに美しかった。本当に何と言葉にすればいいかわからないくらい、あまりにも美しい。あの黒く長い長い御髪が舞で少し乱れるたびに、い、生きてるー!と動揺するレベル。
もう玉様の舞を見るだけでチケット代元が取れすぎている。全世界に見て欲しいし、一緒にうっとりして欲しい。チラシに書いてある文言がもうすごく耽美なんだけど、その通りすぎるので引用させてもらいます。
夢幻の境地へ誘う憐憫たる舞踊をご堪能下さい。

瞼の母楊貴妃も歌舞伎ではあるものの感覚として現代劇寄りで見やすかったから、歌舞伎が初めての方にも超絶おすすめです!

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