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One on One 35th note『side-by-side』観劇感想

2024年2月14日、赤坂RED/THEATREにて、One on One 35th note『side-by-side』を観劇。

笑って笑って少し泣きそうになってまた笑って、最高に楽しかった〜!浅井さんX(旧Twitter)でコメディ苦手だった話してたけどって嘘だよ、コムロ探偵事務所シリーズいつも楽しくてあったかくて大好き!
コメディって根底に悲しみとか苦しみがあって、それをヤケクソでも火事場の馬鹿力でもなんでも良いから、どうにかこうにかぶっ飛ばしてやる反撃の可笑しみのことを言うんだなあって、コムロ探偵事務所シリーズを見てるとそう思う。ただ誰かを論って笑うのはコメディじゃないから。

シリーズ第三段、背中合わせのback-to-back、向かい合わせのface-to-faceに続く、デコボコな横並びのside-by-side。自称脳と心のお医者さんでカメラアイの持ち主アケチと、製薬会社の研究員で転落事故によって記憶喪失になったオオバヤシが加わってのドタバタコメディ。今回もまたミュージカルの楽しさ満点で最高だった!閉塞感すらある小さい箱で、生演奏で歌って踊ってって本当に贅沢な時間だなあと思う。
今作だけ見てても楽しいと思うけど、過去二作に登場してきたハトムラ坊っちゃんとアンドウアイリの気配がそこかしこにあって何だかウルっと来てしまった。アサガリクの最新作にカネダイチさんにモリヤマさん、ここに居なくてもここに居るのがうれしかった。

今回のテーマソングが本当に大好きで元気が出る。
隣を見なくてもいるのはわかる デコボコな横並び 仲良しなんて期待しない やるときゃやるただそれだけ ピンチはチャンス?冗談じゃない ピンチはピンチ チャンスはチャンス 災い転じても災いは災い 大逆転を起こせるか?ただそれだけ
マジレスソングなんだけど、ヤケクソでもなんでも絶対にひっくり返してやるっていう強さに励まされる。

小説家とワトソン君の二足のわらじを履きながら、やりたいようにやりたい放題やってるワダの良い意味(悪い意味かも?)でのふてぶてしさがドンドン増していて頼もしいし楽しい。一作目からすると本当に様変わりしてる気がする。
隣を肩を並べて歩きたいわけじゃないけど、コムロ先生が行く道をついて行ってたまに並んだり、後ろから背中をどついたりしたいんですよねと話すように、以前よりずっとコムロ先生との関係がフラットになったんだろうなと思う。偏屈で照れ屋で言いたいことを素直に言えないコムロ先生とは逆に、言いたいことズケズケ言うしな(笑)

オオバヤシの依頼で黒幕にギャフンと言わせる!と意気込んだ作戦、最初はうまく行っているように見えたけど、被害者に矢面に立たせる作戦は嫌だな〜と思ってたら失敗というか、結局オオバヤシ本人を無理に矢面に立たせることなく終わってよかった、強行突破したらうまく行ったとしてもモヤモヤしただろうから。

作戦失敗で険悪になるコムロ探偵事務所。かつてのコムロは誰にも期待しないから不器用なのに何でも一人で出来るって不機嫌で意固地になってたが、今は相手に期待するからこそキツく当たってしまうとワダは受け取っていて、それは甘えだよなあと思った。コムロ先生は他人に期待して相手に甘えられるようになったんだ。
依存先を増やすことが自立って言葉があるよなと思い出した。ダンマリ決め込んだり過度にキツく当たる言動はもう少し改めなくちゃだけど(ワダやグレコやマエクラがきっちり指摘するから何とかバランスが取れてる)、誰もがいろんな人や物に助けてもらうことを肯定しながら生きるのが社会性だよなあ。「ここに居たら甘えてしまうから」と言うオオバヤシに、ワダが「甘えたら駄目なのかな」って返す台詞でもすごく感じた。
そしてコムロも「戦いに挑むとき誰かが隣りにいるのは心強い」ってオオバヤシに叫んでいて、コムロがオオバヤシを保護したり気遣ったり手助けしたのは、自分も同じ苦しみを味わって同じ相手に復讐したかったからっていう打算的な部分もあるんだけど、連帯をしたかったのもあるんだよな。同じ痛みを克服するために、一緒に戦えたら心強いって。

最終的に、アンドウアイリからの何気ない絵葉書が事件の突破口になるの、愛だな〜って気持ちになった。背中合わせでありたい人に裏切られた同士、シンパシーで繋がった背中合わせのふたり。作り手の愛だし役者への愛だしずっと見てきた客への愛だった。ワダから日々の小さな依頼を取るに足らないと思わず大事にしろと、アンドウアイリから地道な調査こそが探偵の本分だと示されて、抜け目のないコムロ先生が数多の小さな情報を最大限利用しての大逆転!おもしろかった〜。
アケチがコムロの弟だったのも最後まで分からなくて事務所の面々と一緒にえ〜っ!?てなった。オオバヤシが花粉の話になると超絶ハイテンション早口になるのもグレコの髪型をパピラだ〜!ってキラキラし出すのもおもしろかった。

コムロ探偵事務所シリーズ、始まった時はシリーズ物というわけではなかったのに第三段になっても面白さがドンドン増してくる。本当に面白くて元気が出るから、これからも続編やスピンオフとか作ってほしい。
その上で、毎回グレコの扱いがモテから外れた女disをウケ狙いで入れてるみたいな作りなのが嫌だなと思う。コムロ探偵事務所の人達ってみんな"良い性格"してて清廉潔白でもないしどっちかといえば悪役テイストだと思うけど、みんな自分の納得が一番で生きてて他人の勝手なジャッジとかクソだと思ってそうなのに、どう考えても他人軸のモテみたいな価値観で横並びの相手を笑ってんのは楽しくない。
あとここで書くことでもないかもだけど、浅井さんがX(旧Twitter)で今作の裏話的な素敵なエピソードをたくさん話してくれて楽しいんだけど、画像につけるALTは音声読み上げ機能を使用する人のためのもので隠しコンテンツとかではないから、本来の用途で使ってほしいと思った。素敵な内容だからこそ隠さないで書いて欲しいし、画像につけるALTを適切にしたら誰もがフラットに楽しめるわけだから。

One on One 35th note『side-by-side』フライヤーの写真。青いドアの前に主要キャラクターたちが横並びになっている。