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私の内包物をつれづれと

最遊記歌劇伝外伝 観劇感想

2023年10月8日、品川プリンスホテルステラボールにて最遊記歌劇伝外伝を観劇。

Twitter(現X)やfedibirdで感想をつらつら書いてたらちょっと長くなったのでとりあえずひとまとめにしとこう、という覚書の感想文。歌詞についても言及したかったけどそこまでできず。外伝用の新テーマソングの歌詞めちゃくちゃ良かったので配信でも見る予定。

最遊記歌劇伝外伝、今までの歌劇伝の象徴的テーマソングGo to the WESTから変えて外伝用に新曲をテーマソングに据えたのが本当に嬉しかった!そこ保守的になってたらつまらなくなったと思うし、新曲がすごくハマってたし、だからこそ最後の場面が長年見てきたファンにとってぐっと来るものになったと思う。「生きるために生きる」って歌詞はまさに外伝らしさのある言葉だった。15年もの長い間鈴木拡樹くんと椎名鯛造くんのふたりだけはキャスト変更せずに最遊記歌劇伝をラストまでやってくれたのは本当に奇跡だし執念だし愛情だと思ってるし、ラストを飾る公演が最高で幸せだった。

原作でもそうだけど後半は敖潤がキーパーソンで、佐奈ちゃんの敖潤のキャラ解釈と表現に新しい気付きをもらえて嬉しかった。二幕からは敖潤が物語る記憶と記録だと思うと、あの感極まったような歌や感情の発露って、4人に関わることでただ存在しただけ「生きて」いなかった敖潤の命が今産声を上げたってことなんだろうな。登場人物として客観視された敖潤は感情の起伏を見せないキャラに見えてたけど、己の心のまま語り部として物語る敖潤は本当はあんなふうに豊かな感情の波を持っていたのかもしれない。原作読んでる時点では思いもよらなかった気づきが舞台にはあって本当に面白い。

舞台ではこうなるのか!でいうと、天蓬と捲簾のシーンが本当に良かった。原作では捲簾と天蓬のふたりの死に様がそれぞれ順番に個々に死闘を描かれてるけど、歌劇伝では死闘のはじまりは個々に描き、最後ふたりの死に様は同時に描いた。

舞台化にあたり四巻分を一公演にまとめる上での時間短縮と、原作時系列をどう読み解くかの歌劇伝なりの一つの答えと、天蓬が死の間際に何を思ってたかの具現化が全部同時に叶ってて最高だった!これは漫画では表現が難しいし、たしかOVAでもこんな演出はしなかった。舞台ならではの形で描き出したものが本当に素晴らしくて涙がボロボロ出てきた。

天蓬の戦闘シーンは原作でもゾットする感じで、本当に日常の延長のようなひとりごとを考えながら敵を次々と殺していく。死の間際も捲簾にタバコの火を借りて吸ってるのを夢想していて、それこそが天蓬にとって生きてるなあって思う瞬間だったからで。

真っ暗闇の中、死の直前に捲簾を思っている天蓬のひとりごとが聞こえる中で、捲簾が哪吒になり損ないのキメラに咀嚼されている音が響いてるシーンが本当にすごく良くて、こうやってふたりが同時に死ぬ表現が実現したのは最遊記歌劇伝があったからだなあと、すごく嬉しかった。

捲簾が言う「またな」は死に別れるとわかってて言ってたし、天蓬もそれをわかってた。外界の桜の下で会おう、が叶わない約束だって。天蓬が金蝉と悟空に同じ「またな」を渡したように。全部わかっててそれでも天蓬は、本当に「またな」を捲簾と天蓬のままで叶えたかったんだなあって。天界から亡命して、もう別の命になった悟浄と八戒としてじゃなくて、もう会えない自分たちを少しだけ愛しんで死んでいったんだって。ここのふっきーさんの演技が良すぎてボロボロになった。

カーテンコールで天蓬の白衣の裾が悟空にガバーって足元から頭までひっくり返されて、前が見えない状態になってヨロヨロしてたら、捲簾が正面に立って天蓬の頭から白衣の裾をめくってあげてて、擬似的なウエディングベールか?ってなった。同時に死んだし似たようなもんか。

鈴木拡樹くんが本当に見事に金蝉だったんだよなあ。あれだけ長年玄奘三蔵を演じてきて、それを全く感じさせない金蟬童子だった。金蝉は悟空に諦めるなと生きろを言ってあげられて、玄奘は悟空にもしもの時は殺してやると言ってあげられる、明確に違うだけどどちらも悟空の唯一無二の太陽。

鯛様の斉天大聖覚醒シーンが本当にすごい、すさまじい。外伝の幼い悟空の無邪気さ天真爛漫さも、斉天大聖の残酷な殺戮シーンをそこに出現させる身体能力も、本当にすごい。

きたむーの哪吒が本当に最高すぎる……哪吒がそこにいるだけで涙腺がバカになったよ、楽しいシーンやギャグシーンも全部ウルウルしてしまう。

山﨑さんの李塔天が本当に良くて、元々好きな役者さんだし期待もめちゃくちゃしてて、見ながらずっと本物すぎる!!!って思ってた〜ギャグもシリアスもお手の物な役者さんじゃなきゃ歌劇伝は務まらないのでありがたすぎた。うじすけさんの二郎神もホント最高……すべてのキャストが最高。

歌劇伝見終わってオタクたちが退場しながら口々に感想が飛び交ってて、本当に最高だしリピーターチケット買いたいけどこれを何度も見る体力気力がないって感想はほんとそれになった。外伝内容が重いし(原作と同じノリでギャグパートもあるが)1回でもかなり消耗する。素晴らしい出来だからこそね。

最遊記歌劇伝のラストを飾る今公演、まず外伝全4巻分のストーリーの再構築と、今まで長年愛されてきたメインテーマ曲を外伝用にきちんと一新した攻めの姿勢があったうえで、一番最後に今までの歌劇伝の公演を思い起こさせる、始まりへと帰る演出を入れてくれたこと、本当に大満足だった。

惰性はつまらないよ、革新がなきゃ続かないし、いつだって新しくて真摯で面白いもの見たい。Darknessの時とか楽曲も演出も異聞に引きずられすぎ、本編と異聞は違うだろ!って思ったりしたし、毎度好みが分かれるアレを何だこの茶番はって怒ったりもしてたけど、歌劇伝たのしかったな〜!歌劇伝が私の期待に応えてくれてうれしかった。長い間、最遊記の物語をすてきに描き出してくれて本当にありがとう。幸せだった。