インクルージョンボックス

私の内包物をつれづれと

ミュージカル「NOW LOADING」観劇感想

ミュージカル「NOW LOADING」の配信を見た感想。

ツイッターのTLに流れてきて話題になってて気になったので見てみたんだけど、すごく良かった。

この世はアロハシャツ着て歌って踊る、甘い現実逃避行だけじゃだめなのかな。私はぜんぜん駄目じゃないと思うんだけど。こんな墓場や地獄から、ちょっと窓から抜け出して現実逃避行にしけ込もうよ。

ブラック企業パワハラされまくって休職中のゲーム配信者ジョニと、ひょんな事から一緒に配信することになったゲーム初心者でスポーツマンのTAI、顔も知らずに出会ったふたりの交流と疑念と秘密が明かされる物語。

自分が誰かにした行いが、巡り巡って自分に帰ってくるような気がする。罪悪感と自己憐憫とが自分に呪いをかけてくる。自分の苦しみから逃げたくて、誰かを同じ苦しみを与えてしまうのって本当に苦しくて怖くて、でも自分が雁字搦めだからどうにもできなくて、見ていて涙が出そうだった。

現実のパワハラとゲームの中の銃撃戦や地雷がリンクしてるようで、銃を乱射する音のゾワッとする感じと「男を見せろよ」って怒鳴られたり酒を強要されたり脅かされる感じは似ている気がした。ゲームの中なら死んでもリセットできちゃうし、なんなら別に死なないんだけど、でもジョニはTAIを回復しに駆けつける。非現実の場所でなら自然とケアをする。そうやって自分が誰かにした行いが、巡り巡って自分に帰ってくる。良いことも悪いことも。

ジョニがTAIをパワハラしてきた先輩かと疑念を抱くシーンから、実はTAIはジョニが飲み会で寝たフリをしたせいで先輩から無理に酒を飲まされ、仕事もきちんと教えてやらなかった後輩だったと判明するシーンはドキドキした。バーチャルの世界ではケアしあい笑い合ってたふたりが現実世界に痛みと恐怖の感情へ反転するのと、疑念と真実・加害者と被害者が反転して、怖かった。

「男を見せろ」みたいな、謎の「男らしさ」を強要する古臭くて悪い意味での体育会系な社会がどれほど有害かって思う。男が女にケア労働を求めがちなのってこの謎のらしさを正当なものだと思い込んでるから。性別二元論自体がクソだけど、性別役割分担意識って本当にクソ。こんなことしてるから、犠牲の連鎖が終わらせられない。自分の受けた苦しみを誰かに背負わせてひとりで逃げたくなる。みんなで一緒に逃げようよ、女が女のケアできるように、本当は男は男同士でケアし合えるし、誰だって本当は互いに思いやって生きていけるはず。そんな希望を見せてもらえた。

ふたりの未来を想像すると、ここで終わりここが始まりだし、ちょっとこの墓場で地獄な世の中からアロハ着て抜け出して歌って踊ろうよってなる。自分たちに不当に強さを求め「男らしさ」を強要する社会から抜け出して笑い会える場所に行けるんだって。

画像は公式HP(https://amoshogo.com/nowloading/)の転載可能舞台写真から好きなシーンの写真を拝借しました。