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私の内包物をつれづれと

One on One 20周年記念公演「back-to-back」 観劇感想

2021年9月17日、赤坂レッドシアターにて「back-to-back」を観劇。

すごい楽しかった!ミュージカルの楽しさ全開!あと私は赤坂RED/THEATERという劇場が好きだなと、ひさびさに来て思った。あの狭い地下の仄暗い閉塞感、ひっそりと物語の中に没入するのにいい劇場だなと思う。

One on Oneの作品、前作の無題―1[MONO]―を見たとき感想に書いたけど、もっと自分に合った作品なら歌もパフォーマンスもきっとめちゃくちゃ楽しめるはず!って思って期待してた。今回期待以上に最高に楽しくってうれしかった〜!しかし法月康平さんとふっきーさんと浅井さやかさんのタッグ、最遊記歌劇伝が頭をよぎる(笑)

公式HPよりあらすじ
その日暮らしの詐欺師・アンドウアイリ(法月康平)。今日も軽く一儲け…のはずが、不覚にも撃沈。わけあって<コムロ探偵事務所>のドアを叩くこととなる。
アンドウの来訪を待ち受けていたのは、一流好きで超理論派の探偵・コムロ(藤原祐規)、“夢はワトソン”コムロの助手未満で雑用係のワダ(新正俊)、情報屋で発明家のマエクラ(田村良太)。
初対面ながら意地の張り合いが止まらないアンドウとコムロ。
取材に訪れていたタウン誌『そらおと』の名物記者・モリヤマ(岡田亮輔)の密着を受けつつ、事務所大家の息子・ハトムラ(小林優太)、たびたび事件の相談を持ちかけてくる刑事・コグレ(千田阿紗子)を巻き込んでの大騒動がまきおこる――!
偽りと真実は背中合わせ。
思惑が幾重にもからみあう中で見えてくる、“本当の真実”とは・・・!

以下ネタバレ感想

 


まず最初に歌が楽しい。ミュージカルって楽しいよね〜!ってワクワクする楽曲が生演奏と一緒にどんどん出てくるのが良い。あとセットが素敵!その中で男も女も全員スーツで歌って踊るの単純にかっこよかった。1幕物でテンポ良くストーリーが進むし、途中であれ?と思ったことが後々キレイに回収されるのが気持ちよかった!

キャラクターみんな魅力的だった!正直どいつもこいつも癖が強いし実は結構嫌なやつだったりマジかよって思う所があったり、決して清廉潔白で純真無垢ではない人たちなんだけど、憎めないし好きになっちゃう。クライムコメディなんだけど、詐欺師が一番人を騙すのが下手っぴで微笑ましくなっちゃう。まあ物語のキャラクターだから好きになっちゃうだけで、実際身近にいたらちょっと嫌かもしれないけど。嫌なところも魅力的に魅せてしまうキャストの手腕がすごいのでやっぱり好きになっちゃう。動揺を隠せずに下唇突き出しちゃった顔とか、素直に言いたくない事を言うときの聞こえないくらい小さい声からの渋々嫌々言うでかい声の抑揚とか、超理論派でいやみったらしいのに可愛すぎるコムロ探偵に笑いをこらえるの大変だった!

探偵って、詐欺師って、警察って、お坊ちゃんって、助手になりたい子って、こうなんじゃないかこうあるべきなんじゃないかっていう見てる側の思い込みを利用して、いつの間にかひっくり返されちゃうのが面白かった!これは騙されないよ仕組んでたでしょって予想してその通りになった部分も結構あるけど、いやいや嘘でしょここから仕組まれてたの???のどんでん返しが楽しくて、気持ちよく騙してくれて最高だった!

詐欺師のアンドウの、最初はほんの2秒の決意で簡単にはじまったいけないことが、どんどんエスカレートしていって、自分で自分を必要以上に馬鹿だからって麻痺させていったのが悲しかった。鈍感にならないと生きていられないのにそのせいでどんどん止まれなくなって転がり落ちてく。心をそれ以上鈍らせなくてもいいと止めてくれる人に出会えた事も、誰かが止めてくれたら止まれる人だった事もよかった。でもそんな人だから師匠との別れがいつまでも刺さって仕方がないんだよな。

探偵のコムロの、偏屈でこだわりが強くて観察眼が鋭くていろんなことをすぐ見抜けて思った事ズケズケ言っちゃって煙たがられる所がありつつも、彼と同じくらいに個性が強くて我が強くてマイペースを崩さない人たちに囲まれると全然なにも完璧でもなくて、彼らの助けが必要な普通の一個人になるのが何だかとっても安心してしまった。コムロとアンドウ、凸凹ってくらいに全然似てないのに、師匠との別れが心のなかでシコリになって身動き取れなくなってる所はよく似てるんだよな。

背中を追いかけるだけじゃなくて、追いついて並んで、もっと広い世界を二人で見たくて、背中合わせでいたかった人。そんな人と出会って、でもそう在れなかった過去をそれぞれに引きずって生きてたアンドウとコムロが、事務所に集まる個性豊かでマイペースな人々と、みんなでそれでも生きていく。割れちゃった器はたとえ繋ぎ合わせても元通りにならないけど、金継ぎの跡はそれはそれで魅力的だし、進んでいけるよって。事実は人の数だけ異なる真実を生み出して、傷ついたり傷つけたりするけど、癒やすこともあるかもしれない。

人と人との繋がりは何もいいことばかりじゃないと思ってるけど、コロナ禍でこういう前向きで明るくて、誰かの願いが人と人との間で繋がって、伝播するように叶っていくこともあるっていう作品を見るとグッと来ちゃうなあと思った。

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