2021年4月17日、シブゲキにてOne oe One 20周年記念公演第一弾、無題 ―1[MONO]― 昼公演を観劇。
最遊記歌劇伝シリーズの楽曲で知った浅井さやかさんが作・音楽・演出のミュージカルを初めて観劇。歌劇伝の楽曲めちゃくちゃ好きなんだけど、今作品の音楽もとても好みで聞いてて楽しかった!楽曲数がかなり多かったんだけど、歌唱シーンのストーリーのスピードがゆっくりになる感じがミュージカル見てるなあという贅沢感だと思う。物語の停滞のかわりに与えられる、エンタメ性と空間・想像の広がりとあるいは個々の役を注視する時間。あと石田隼くんの演技、久々に見たけどやっぱり好きだなあと思った。コミカルなシーンもシリアスなシーンも抜群の安定感で楽しませてくれた。
物語は、見た目では人と区別がつかないアンドロイドと人間が共存する未来のお話。破天荒なキャラクターのアンドロイドのクミコと無愛想な青年レイの交流の物語。
楽曲はとても好みだったし全体としては楽しかったんだけど、結構価値観が古いなあと思った。(16年前の作品の再演とのこと。)アンドロイドを作る際、頭部のデザインは10人以上のサンプルを混ぜ合わせないといけないという倫理的ルールがあるくらいなのに、家事アンドロイドが女性型だったり配達や博士アンドロイドが男性型だったり(他の同業アンドロイドの見た目の性別が明かされてないからなんとも言えないけど)する所に古さを感じざるを得なかった。以前、人工知能学会誌の表紙がほうきを持った女性型アンドロイドのイラストで、ヘテロ男性の性幻想だ女性蔑視だと炎上してたのを思い出してしまった。
最近自分のメンタル面が微妙だ。異性愛規範や恋愛伴侶規範に対して辟易していて過敏になってるきらいがある。だからかもしれないけど、恋愛的描写が結構キツかった。異性愛賛美がしんどい。こういうストーリーだと知ってたら、現在のメンタルでは観劇を選択しなかったと思う。もっと調子のいいときならもっとマシな感想があったかもしれない。ミュージカルらしい歌唱シーンの楽しさは本当に最高だったし個々のキャラクターや演技や楽曲は好みだったので、楽しいとしんどいがジェットコースターだった。
人間の男同士、人間の女同士、人間の母親と息子、人間の母親とその息子そっくりに作られたアンドロイドの男、人間の母親と別のアンドロイドの男、アンドロイドの男女、それらの関係性が並列して描かれていたのが若干の救いだった。けどその分、主人公ふたりも恋愛的でない関係性で描かれたら良かったなあとすごく思った。誰でも恋をするって歌の歌詞の中に、その恋の対象の自由さを表現していた所にちょっと救われたが、それなら恋を望まない自由も許してほしい気持ちになった。
アンドロイドに心はあるのか、感情は芽生えるのか、SFでよくある議題だと思う。私は、もしアンドロイドに心があり感情があるのなら、人間がアンドロイド対してそうであって欲しいという願望がそう見せてしまっているんだと思うし、その願望がアンドロイドに心や感情があるような振る舞いをさせてしまうのだろうと思ってしまう。夢のない考え方だけど。
日本のオリジナルミュージカルって少ないし、それを20年も生み出し続けてるのはものすごいことなので素晴らしいなあと思う。これからも続いてほしいとも思う。(Endless SHOCKも日本のオリジナルミュージカルで20年だったな、稀有な存在だ。)けど今回、全く知らないミュージカルやストプレを見に行くことのデメリットと、ある程度知名度のあるグランドミュージカルや原作のある作品や2.5舞台を見に行くことのメリットもめちゃくちゃ感じた。自分が見たくない表現があるかどうかある程度予習ないし予見できる所だ。オリジナル作品ってあらすじもそれほど詳しく書いてないしあまり避けようがないけど、原作あるものや有名作品は避けようと思えばある程度自衛として避けることができる。
無題 ―1[MONO]―は自分のメンタルの調子が良い時に出会いたかったなあと思うので、One on One次回作の時に自分の調子が良さそうなら今度は新作を見てみたい。