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JOE Company「騙されざる者たち」観劇感想

2019年3月30日、下北沢小劇場B1にて「騙されざる者たち」を観劇。

登場人物、全員、詐欺師!!
騙し騙され、勘違いが勘違いを呼び、最後に笑うのは誰だ!
究極のクライムコメディの幕があく。

というキャッチフレーズの面白さと、前々から知っている石田隼くんの出演ということで見に行ってみたのだけど、とても痛快で面白かった!
個人的な好みでいうとぐるぐる思考が回るタイプの劇のほうが好きなのだけど、気軽に見に行って大笑いして元気をもらって帰るって感じの舞台もとてもいいなあと思った。
以下ネタバレ感想。

 

下北沢小劇場B1という劇場ははじめて行ったのだが、地下の小劇場ならではの閉じ込められた感じがいい雰囲気だなあと思った。以前赤坂REDシアターに行ったときも地下の小劇場ならではの閉塞感があり、それに合う息の詰まるような演劇をやっててものすごく良かった。

この作品、コメディなので笑いどころがたくさんあって何度も声を上げて笑ってしまった。全員が詐欺師で、全員が同時多発的に騙し合いをどんどん重ねていく犯罪者たちで、この狭く閉塞感のある密室めいた地下の劇場で、その秘めるべき犯罪を成功させようと画策し合う登場人物の様子が衆人環視であることが、見ている人にだけ大いにバレていることが滑稽で、余計に面白くて笑えるのだなあと思った。

島田順司さん、騙す側と騙される側の二役を演じ分けているのだけど、これがまたすごかった!騙す方がおろおろと慌てふためきつつ周囲を巻き込みながら詐欺を遂行しようとすると、どっしり構えた騙される方がそんなことは露知らずに普段通りに過ごすのだけど、騙す方の残したいろんな痕跡によってホクロを引っ張られたり乳首を引っ張られたりして、大爆笑してしまった。顔は同じだけれど、口調も声のトーンも態度もまるで違って、詐欺師たちとの噛み合わなさが妙な形で噛み合ってしまったせいで、詐欺師のほうが翻弄され始めて、騙し騙されがどんどんぐちゃぐちゃになっていく。
この演目は島田順司さんが二役をどう演じ切るかがものすごくキモな作品だなあと感じた。一人が演じてるので当然ながら鉢合わせするはずなんて無いのだけど、これもしかして鉢合わせしちゃう?なんてハラハラした。初めて拝見させていただいた役者さんなのだけど、御年80歳の大ベテラン!さすがの演技だった。
途中ちょっとしたトラブルで大事なホクロが取れてしまったのだけど、コメディ要素として最初からこうなる予定だったのか?と一瞬思って、次の瞬間、いやいやこれはトラブルだ気づいてさらに笑いがこみ上げるような神がかったトラブルで会場がひとつになって大笑いした。

他にも大ベテラン勢と若手の役者さんたちが狭い劇場を縦横無尽に行き来して、目まぐるしいほど。手動での場面転換もたくさんあるのだけど、不思議とストーリーを阻むような不快さがなくテンポよく進んでいく。劇場の狭さと暗さのおかげかもしれない。ずっとストーリーに、詐欺師たちの思惑と言動に注視していられて楽しかった。

メイド役の仲宗根久乃さん、個人的にとても好きになってしまった。島田順司さん演じる雇い主と、その主にそっくりな詐欺師とのやりとりがものすごく楽しかった。コロコロと笑いながら騙され、騙されているはずなのに周囲を(そうとは知らず)楽しそうに翻弄し、最後には騙す側にまで行ってしまう振り幅の広い役どころを明るく破天荒に演じる姿がとても気持ちが良かった。

石田隼くん、コメディシーンも抜群に面白かったけど、その後に突入する島田順司さんとふたりで対峙するシリアスなシーンがとても良かった。コメディシーンでの面白さを見た後だからなおさら、静かに激しく感情があふれてそこに留まり、ぶつけては怯えて、最後には寄り添うことができるようになっていく姿が、ストーリーが、とても印象的だった。
彼の出演する作品を網羅しているわけではないけど、タイミングが合って面白そうだと思ったものは見に行くようにしていて、それがだいたい外れなく面白いので勝手に信用している役者さん。今回も面白い作品に出会わせてくれてありがたいなあと思った。

大ベテラン役者と若手の役者が体当たりでぶつかって、楽しいのにバチバチしていてとても面白かった!一番最後の大ドンデン返し、本当に気が付かなくてびっくりしたし、演じている方は騙してやった快感でいっぱいだろうなと少々悔しくもなった(笑)仕事終わりの観劇で、翌日以降もバタバタ仕事してたら感想書くタイミングが遅くなってしまったけれど、とっても面白かったので自分のために記録に残しておく。