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劇団ホチキス20周年記念公演第2弾「あちゃらか」観劇感想

2017年6月11日、15日 劇団ホチキス20周年記念公演第2弾「あちゃらか」を吉祥寺シアターにて観劇。

劇団ホチキスさんはお名前は聞いたことあったものの見に行くのは初めてで、たいした下調べもせずにエイヤ!と見に行ったんだが、「あちゃらか」ものすごく楽しくて見ていて幸せになれる舞台だった!笑って泣いてまた笑って、楽しかった!
あとすごいバカみたいな感想なんだけど、役者さん皆さんピカピカしててステキで目が足りなかった~!吉祥寺シアターって舞台に奥行きがあるから広く見える気がするけど結構キャパ小さくて役者さんがすごく近くて、熱量がガンガン伝わるのと顔面も身体も内側から光ってるような感じがするくらいピッカピカだった。
以下ネタバレと妄想がひどい感想。

 【あらすじ】HPより引用
時は江戸時代、町人文化花盛りの江戸の町。町で本屋を営む版元人(出版人)蔦屋重三郎の元には、なにかと町の問題が転がり込んでくる。蔦屋に、絵の才能を買われ絵師として住み込みで働く歌麿とともに、町の問題に挑む毎日。ある日、町を牛耳るヤクザ、邪組(よこしまぐみ)の三代目若頭が蔦屋を訪ねる。邪組は、手広く商売をし町で幅を効かせていたが、組の存在を脅かす動きが起きているというのだ。それは、江戸幕府を影で支えた忍者集団、くノ一の「イタチ」なる集団が、町を一掃するために次々とヤクザを潰しにかかっているというのだ。そんな蔦屋のもとにも、1人の元くノ一が、蔦屋の命を狙いにやってきた。蔦屋は、町の敵とされていた…。
http://www.hotchkiss.jp/acharaka/

町田慎吾さんが主人公の蔦屋(ツタジュー)だったんだけど、もっとヒーローヒーローした人がやったらまた全然違う印象だったんだろうな。町田さんの優しい人情味あふれる人間性がにじみ出てて、周りの人みんなを愛さずにいられないツタジューに何度も笑って泣いてまた笑った。勝手な印象なんだけど、町田さんって陰陽の両方の要素を持ってるというか、明るい部分だけじゃない哀愁を持っている気がしてて、ツタジューの二面性を描くにはとても合っていたように思う。

1回目見た時の感想は、歌に踊りにアートに落語に立ち回り、エンタメぎっしりてんこ盛りで、もう大満足!って感じだったんだけど、あーこれは1回では足りないと思ってチケットを増やした。合計3回観劇したんだけど、2回3回と見ていくとまた違う感想が出てきたというか、派手なエンタメ要素に目が行って見えてなかった部分がようやく見えるようになった。

ツタジューさんはやっぱりただ利他的な人ではないのだと思う。深町に「逃げていいんだ」と、少し食い気味に叫ぶのは自分を正当化したかったのと、何より自分自身が誰かにそう言って欲しかった言葉なんだと。
自己否定の先の自己肯定というか、ツタジューさんの利他的に善人的に見える行動には他人の為ではない罪滅ぼしという自覚がある。その自己否定の行為の先に他者の目に見える幸福があれば、絶対的に自身を肯定できるかもしれない。人を殺したことも不幸にしたことも逃げ出したことも、自己否定の先で肯定されたいのかもしれない。
ツタジューさんが裏の世界から逃げ出す時に鬼一さんを道連れにしたのも、鬼一さんにとってそれが救いになることでツタジューさんの自己肯定の材料のひとつになる。そしてツタジューさんにとっての最たる自己肯定の対象は歌麿なんだと思う。
ツタジューさんによって男として生きることになった元遊女の歌麿が、自分のそばで生き生きと甲斐甲斐しく楽しそうに生きている事が自己肯定に繋がってる。鬼一さんが、歌麿が来てからツタジューの悲しみが癒えていることを告げていたけど、そういうことかなと。
全然違うのは承知してるんだけど、「高瀬舟」を思い出した。学生時代に高瀬舟を読んだ時、喜助の弟殺しは利他的な感情だけじゃないなと思ったことを思い出した。ツタジューさんは最後、深町に自分の身代わりをさせようとした。結局ツタジューさんは死ななかったから叶わなかったけど、ある意味、永遠に続く罪悪感から解放されたかった、これで解放されると思ったのかもしれない。
誰かを救うとか、人知れず死ぬ遊女に死化粧と金を渡すとか、そういう積み重ねがいつか自身が絶対的に自己肯定するための材料になるならそれは良い事だ。深町に刺された時ツタジューさん笑ってて、なんだか嬉しそうに見えた。死は解放と希望だったのか、それとも深町に笑ってほしかったのかわからないけど、そのまま笑顔で死んでしまうより、意地汚く生を希うようになるならどんどん偽善者になってほしい。
自分がして欲しかった救いを誰かにするのは、必ずしも相手の救いになるとは限らないけど、自慰なんて自分が気持ちよく生きられるためにすればいいんだからもっとやればいい。ツタジューさんの人情味のある表面と、罪悪感や自己否定から楽になりたい裏面どちらも生々しくて好きだ。
どちらの面もきっと人が好きで愛してしまうことに変わりはなくて、だから愛されている。死んで楽になることを許されないくらいに、神様に喧嘩吹っかけてまでその命を取り戻そうと周囲に思わせるくらいに。

ひどい妄想はここまで。

初めてホチキスさんの舞台に触れてみて、こんなに終始笑いっぱなしの舞台ってある?って思うくらい笑わせてもらった。おなか痛い。
あととにかく歌が楽しい!楽しかったミュージカルの観劇後とかって帰宅しながら頭の中を歌がくるくる回って楽しいが持続したり、日常のふとした瞬間に歌がよみがえって観劇した時の楽しい気分を連れてきてくれたりするけど、あちゃらかも歌がめちゃくちゃ良かった。
あと吉祥寺シアターの奥行きのある舞台を活用しまくった立ち回りやダンスの華やかさ。あれだけ沢山のキャストがひしめき合うとギューギューで賑やかでお祭り騒ぎで目が足りなくて大変だった。
あと落語!落語のところ、日替わりネタでめちゃくちゃ楽しい。1回目は時そばが女性バージョンになってフォー食べてて面白かったし、2回目はお岩さんのオタクバージョンで、3回目はまんじゅうこわいのヒップホップバージョンでめっちゃ笑った。
時代劇なのにものすごく現代的で、個人的にメタ視点の入る作品って苦手なんだけどそういうのとはまた違って、ホチキス流パラレルワールド時代劇なのかな?と思った。時代劇に天使が出てくる時点で不思議な世界観なんだけど、スッとその世界に入れてしまうから面白い。
悲しいシーンで明るい歌を使う演出ってよくあるけど、泣きどころで笑わせてくるのずるいし、1回目は普通に笑ってたシーンが2回目3回目だとうっかり泣いてしまうし、ずるいなあ。

町田さんが実際に動いてる姿を生で見るのものすごく久々で、チケット取ったきっかけは、4月に発売されたEndless SHOCKのサントラ2の初回盤特典DVDでかつての町田さんをお見かけして、その後プリステで町田さんの振付を踊る俳優さんたちを劇場で拝見して、町田さんのツイッターであちゃらかに主演することを知ったという何ともミーハーなものだったんだけど、ミーハーでいると良いこともあるもんだなと思った。
小玉久仁子さんの狂言回しとしてのテンポの良さ、小気味のいい語気、テンション、身のこなし、全てにグイグイ引き込まれた。舞台の物語のなかに引っ張りこまれる感覚が楽しいなあ。歌麿は男として生きつつも虎視眈々と女としての自分を復活させようともしてて、女としての面が露出する瞬間のかわいさがたまらなかった。
片山陽加さんめちゃくちゃかわいかった。沙羅は顔に似合わずすごいドスドス歩いたりドスの利いた声で叫んだりコマネチしたりとすごいことになってたけどかわいかった。なんともピュアに破天荒だった。
齋藤陽介さんは表情筋がすごい。邪紅は仮面取り替えてるのかってくらいいろんな表情にすぐ切り替わってすごい。鮮やかだった。落語も面白かった。
碕理人さんは古くはテニミュ、最近ではコルダぶりに拝見したんだけど、邪空はものすごくいいおバカキャラで大好きだと思った。パパラポアー!!!ってなんだ?(笑)出てくるたびに笑いを生んでさっそうとはけていくの最高。
髙木俊さんはずるすぎる。おアゴちゃんがもう、アゴでどんだけ笑い取るんだって感じ。邪黄は三人衆の中でおつむ担当で一番しっかり者なのにドッカンドッカン笑いを落としてはけていった。ずるすぎる。
塩崎こうせいさん厳ついのにふんわりしてて好感度上がりまくった。フリフリヒラヒラのエプロン姿最高。鬼一さん頼りになる男前なのに天然ボケなの最高。
ツイッターでツタジューさんと歌麿と鬼一さんの関係性がシティーハンターっていうの見かけてそれだー!と思った。てことはツタジューさんと沙羅はエンジェルハートかな?とも思った。
他にもたくさん素敵な役者さんがいてとにかく楽しかった。劇団としてのカラーがすごく強い作品だと思うので、ホチキスさんの過去作品のDVDを見てみようと思う。あちゃらかのDVDも予約した!早く見たいな~。

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