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壽 新春大歌舞伎 第一部 卯春歌舞伎草紙 弁天娘女男白浪 観劇感想

2023年1月24日、歌舞伎座にて壽 新春大歌舞伎 第一部を観劇。

壽 初春大歌舞伎 楽しかった〜!卯春歌舞伎草紙 は着物も背景もド派手!華やかできらびやかで絢爛の春の到来を寿ぐショーだし、弁天娘女男白浪 は弁天小僧の名場面が最高!愛嬌たっぷり憎たらしくても憎めない愛之助さんの弁天小僧すごくよかった。

壽 新春大歌舞伎の第一部は一幕も二幕も愛之助さんと勘九郎さんがコンビ組んでてそれも楽しかったな。

イヤホンガイドで、白浪五人男は江戸の風情を描いた江戸っ子の芝居だから、上方役者の愛之助さんが東京で弁天小僧を演じるのは珍しい事と解説があって(南座では演じてらしたよう)普段関東圏でしか歌舞伎を見ない私が歌舞伎座愛之助さんの弁天小僧を見られたのはすごくラッキーなのでは?と勝手に嬉しくなっていた。

【卯春歌舞伎草紙】

とにかくド派手できらびやかで華やかで、絢爛の春の到来を寿ぐショー、晴れやかな気持ちになる演目だった。一糸乱れぬ念仏踊りが見応え満点なんだけど、元々は宗教的な踊りがどんどんエンタメ化して盆踊りになっていったんだな。右源太左源太は愛之助さんと勘九郎さんが演じていて、二幕の弁天娘でもコンビなので続けて見るとちょっと嬉しくなる。

この演目、衣装がものすごく楽しい。阿国も山三も右源太左源太もかぶき者だから、超ド派手で摩訶不思議な格好してるのも面白いし、念仏踊りを踊る女歌舞伎と若衆達のシーンは、みんな同じ柄や形の着物だけど、全員着物や襦袢の色が違ってて、足袋も派手な色してるし、誰ひとり同じ色を着ていない中で一糸乱れぬ舞踊を見せられると圧巻!!!無限の組み合わせがあって楽しい。男も女もみんな片肌脱ぎで着物の内側の鮮やかな襦袢が片側から出てて、袖がだらりになって踊るから本当に舞台上がどこまでも色彩豊か。最後に全員が花道から舞台まで勢ぞろいして目がくらむような華やかさだった。若衆の染五郎くんを発見したけどとてもかっこよかった。

解説を聞いてて思ったんだけど、出雲の阿国が名古屋三山の死後すぐに山三の霊が出てくる舞台を作ったことから阿国と三山が恋仲だった説が生まれて今なお語り継がれてるの、昔から人はゴシップ好きだな。スターの恋愛事情やら生まれ育ちやらを掘り返しては妄想して消費するのは昔から今も変わらんのね。

【弁天娘女男白浪】

愛之助さんの弁天小僧をめちゃくちゃ楽しみにしてた!美しい武家の娘の姿もとってもすてきだったし、だからこそ正体を明かすときのギャップが最高だった!有名な「知らざあ言って聞かせやしょう」にテンション上がりました。

この演目初めて見たので「知らざあ言って聞かせやしょう」に行くまでの展開を初めてきちんと見たんだけど、店の主人にあたかも万引きしてるように見せる手口が鮮やかすぎてすごかった。あと店の独特の掛け声やざわざわと賑やかな感じ、丁稚のちょっと生意気そうな感じや甲高い長い掛け声も楽しい。

武家の娘に扮した弁天小僧と若党に扮した南郷力丸が、店主から詫びの十両をこんな端金とごねにごね言葉巧みに百両をせしめる展開もテンポがよくて笑ってしまう。

唐突に店の奥から出てきた侍が、美しい武家の娘は実は男であると正体を見破る展開は急だな!?ってなるけれど、イヤホンガイドでこの侍が実は白浪五人男の一人の日本駄右衛門でグルなんだというネタバレを聞いたので納得した。

正体がバレた後の弁天小僧の様変わりが、物凄く軽快でざっくばらんでひょうきんで、「知らざあ言って聞かせやしょう」の前のここの演じ方は役者の個性がめちゃくちゃ出るんだろうなあと思った。愛之助さんの弁天小僧楽しくて最高だった。弁天小僧って普段女形をメインでやってる役者と立役をメインでやってる役者ではめちゃくちゃ表現が変わってきそうだよな〜というのを愛之助さんの弁天小僧を見ていて思った。

稲瀬川勢揃いの場で白浪五人男が揃いの着物に揃いの番傘で順々に見得を切っていくシーン見てたら、戦隊ヒーロー物の元ネタが白浪五人男だってのはすごく納得した。かっこいいもんな。

全然話は変わるけど、店の主人が万引きと思い込んで算盤で額を打って血を流す武家の娘(実際には弁天小僧だが)に対して、誰も直接頭を下げたり謝罪の言葉をかけたりしないんだよな。連れの若党には土下座して謝るし何とか穏便に済ませてほしいと金を積むけど、実際に暴力をふるった娘にはそうしない。女は父親や男の所有物だから。時代背景的な部分もあるけど、歌舞伎だから誇張してこう描かれてると思えないくらいに現代とそう変わらないと思わされる事が、結構ショックだったりする。