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私の内包物をつれづれと

おおばかもの~おおばかものだけど、わるいやつらではない~ 観劇感想

2016年10月28日、おおばかもの~おおばかものだけど、わるいやつらではない~を観劇してきました。
なんともモヤっとする舞台で、舞台をよく見に行ってる友人には会うたびに愚痴ってしまったんだけど、ひとりで見に行くとアウトプットが上手いことできないので吐き出します。
まず大前提として私が小劇場系の舞台よりもエンタメ性の強いミュージカル作品の方が好きなので好みとずれてたってのがありますので、ご覧になって純粋に楽しめた方には不快な感想だと思います。

あらすじは、俳優を目指す7人の若い男女の苦悩を描いた青春グラフィティという感じで、夢を追いかけながらも理想と現実のギャップに苦しみ、毎日居酒屋で愚痴をこぼしてはこんなはずじゃなかったと嘆いている話。

本当は居酒屋で愚痴をこぼしてるシーンがメインじゃないんだろうけど。

以前、森田桐矢さんをテニミュで拝見して、当時その役の印象よりもずいぶんと美形の俳優をあててるなと思っていたら、彼の役の解釈が独特でとてもおもしろくて興味を持ったので今回彼がどんな演技をするのか楽しみだった。
今回は鳴かず飛ばずの役者志望で後輩に先輩風吹かすくせに自分も大したことないっていう役。
身近な先輩が劇をぶっ壊してでも目立ってやるって息巻いているのに対して憧れてしまうんだけど、結局それは勇気がなくて自分にはできないから憧れているんだなとわかる感じ。
憎めない役どころでなかなか良かった。あとアンサンブルのダンスシーンではテニミュの影響か指先まで型を作ってキメて踊る感じが華があり、いてもいなくても影響がないと思われているアンサンブルの中で何とか目立ってやろうともがいてる役にもマッチしていてよかった。

ひとりひとりの役者さんの演技を見ていると、いいなと思ったり印象に残ったりする部分もあったので、役者の問題より脚本演出の問題かなとも思った。
大道芸人目指してるのに全然できてない役のセヒョンさんとか、アンサンブルの中では一番売れた経験がある役の小林亜実さんとか、
脱サラして役者目指してる役の小西啓太さんとか、教師やめて役者目指してる役の八坂沙織さんとか、みなさん話し出すとパッと目を引く存在感があった。
W主演と謳われていた2名に触れないのはお察しください…なんで主人公が一番目立たないんだろう…ぜんぜん華がなく心に残るシーンもなくパッとしない…つらい…。

トーリー的には青春物で夢を追いかけるってやっぱりいいですね!感動しました!みたいな感じのことを思ってほしかったのかもしれないのだけれど、そういった感想には至れなかった。
舞台をよく見に行っている友人は、つまらない舞台だと最前列でも寝るよって言ってて、実際寝たりはしなかったんだけど、舞台に目をやりつつも思考が別のところに行ってぼんやりとしてしまった。
この作品は若手俳優自身に、鳴かず飛ばずの若い役者の苦悩を追体験させることによる、本人たちの擦りきれそうなヒリヒリ感とか複雑な感情とか自己投影を引き出すのが目的で作られた舞台なんだろうかと思ってしまった。
主人公に対して、舞台を見に来た友人の一人がその舞台のことを酷評するシーンがあるのだけど、その内容がこのおおばかもの見ていて感じた内容に似ているのはなんの自虐なんだろうか。
無駄に何度も繰り返されることでどんどんテンポの悪くなるギャグシーンとか特に。引き際を見極められてないとしか思えない。
脱サラして役者してる男性と、教師やめて役者してる女性が、お互いに自分をバカだと言い合っていて、そのシーン自体は役者の力もあって印象的なんだけど、展開がもやもやするせいでお互いにそれをバカだと断言するのも、謙遜というより結局自己憐憫的な自虐なような。
その自己憐憫的な自虐はなぜ行われたのか?後で言われても自分でもわかってるし(笑)みたいにあらかじめ手を打っておいたってことなのか。
安全牌を狙って自分で作品を愚作だと言っているようにも思えた。
お金払ってチケット取って休みを1日費やして見に行ってるのになんで?って気持ちになった。
おおばかものの感想、若者が夢を追いかけるキラキラした姿に感動した!みたいなやつ見かけたけど、わかんないな。
追体験が目的に見えてしまって、彼らの涙が誰の感情の涙だったのかが気になってしまった。変な話、実際に役者自身の涙だったとしたって、それが芝居として演出としてうまいこと行ってて内容が面白かったらこういう感想にはならなかったと思う。
あと最近開演と同時に静まり返る観劇に慣れすぎて、おおばかものの開演から終演までずーっと誰かが咳き込んだりガサガサ音立てたりが続くのが気になって集中しきれなかった。
でもそれって舞台上に緊張感がないからとも言える。
以前ほかの舞台で同じくらい小さいキャパの劇場で見たことあるけど、見どころ来る!って時には客席が静まり返ってたから。
主人公(および主人公を演じてる役者)が全く好みじゃなかったってのが楽しめなかった要因のひとつでもあるかな
やる気のない時のダンスと、やる気満々の時のダンスがほぼ一緒なの、あれ単に下手なだけなのかな。
周りの人から明らかに浮くくらい下手で、やる気満々のシーンはもっとうまく踊ってほしい。
こんなに小さいキャパの劇場で違いがわからないってことは、大きいキャパの劇場だったならそれこそ全くわからない。
やっぱりダンスシーンあるならうまく踊ってほしいし、うまくないならうまくないなりに、演技として、やる気のある時とやる気のない時のダンスは表現方法をわかりやすく変えるべきじゃないかな。振付一緒なんだもん、どっちも下手なだけじゃわかんない。
このあたり役者の練習不足なのか、アンサンブルのダンスシーンを脚本演出側が価値を見出してないのかわからないけど。
舞台ってむずかしいな~。舞台そのものの良し悪しなんてものはわからないけど、自分の好みとあってないとチケット代は決して安くないよ。
チケット代倍だしても良い!この舞台でこのチケット代は安すぎる!って作品もあるし、一幕見終わった時点で思わず物販に走ってパンフレット買って幕間中ずっと読みふける作品もある。
友人にはこのSNS時代に検索して具体的な感想が出てこなかったり、特定の役者をファンが褒めてるのみだったりする舞台はヤバいと言われたので、それに該当する作品だったなと思った。

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