インクルージョンボックス

私の内包物をつれづれと

ポセイドンの牙 Version蛤 観劇感想

2017年10月17日と20日、紀伊國屋ホールにてポセイドンの牙を観劇しました!
もうずいぶん経ってしまったんだけどすごく面白かったので今更すぎるけど感想を残しとく。思い出しながら書くから支離滅裂です。

f:id:inclusionbox:20171112205822j:plain

舞台セットがすごく素敵だった。舞台上の手前と奥とで上下するたくさんの吊り物や教室の机や海底の玉座や病院のベッド、全部本物の廃棄物を使っているそう。舞台のストーリーでも出てくる人間が出したゴミによって形作られたセット。真っ白の塗られたいろんな種類のゴミが組み合わさっているから、子供が工作で作ったおもちゃみたいに不恰好なんだけどすごく美しく見えるのが不思議でおもしろかった。吊り物が上下に動くさまが、嵐になったり牢獄になったりして、それを見ているだけでも脳がいろいろ受け取っている気がした。

序盤は主人公の男子高校生5人組の下ネタだらけのトークがすごくて、神話の世界の神々もなんだか人間味があって、コメディ要素満載で笑いまくってたら怒涛のストーリーにどんどん飲まれて最後の台詞にゾッとして鳥肌が立った。台詞後に暗転した時の静まり返った真っ暗な劇場にまた鳥肌だった。
神話の世界とバカ男子高校生と、現代社会への風刺と、生と死と愛と罪と嘘と本当と。こわいなあ、おもしろい。またテストを受ける時、人は覚えてるのかな神様は理不尽だって。

本当は神話の元ネタとかがいろいろわかる人の方がより楽しめたんだろうなと思った。エンタメを楽しむには教養が必要だなって。見ながらいろいろ考えてぐるぐるするのが楽しかった。

主人公が住んでるナカツ県乙亀市は日本神話(あと浦島太郎?)で、そこにあるスニオ岬はギリシャ神話で、その海域の名前ワタツ湾は海神=ポセインドだからギリシャ神話の神々が住んでいて、ナカツ県を買収したインドラインベストメントはインド神話側の勢力がいる。
インドラインベストメントがナカツ県を買収するのと、インド神話の神々が深海のギリシャ神話の世界を侵食するのが鏡写しになっている。海底の宮の名前がウツノミヤで、ゴタンダ、ヨコスカ、シンジュクがある、かつて栄えた地上の都だった。かつてポセイドンとアムピトリテが作った鏡写しの島が地上のナカツ県ってことなのかな。磨多井はそのままキリスト教の聖人かな。

ポセイドンがアルジュナだと言われた意味を考えて、どうしてもわからなくて、ポセイドンは何度も繰り返してるってことかなと。何度も繰り返す中でかつてアルジュナだったことがあるのかな。
ポセイドンが宇宙期に星の名前みたいだって言った意味ってなんだろうって考えて、宇宙期に「トリトン」を演じさせるのにも意味があるのかなって。ポセイドンとアムピトリテの子供としてのトリトンってだけじゃなくて、衛星の方のトリトン。逆行回転する衛星トリトン。ポセイドンは時間を逆転させたかった、元に戻す、またやり直すことを示唆してたのかな。
宇宙期が母親の見舞いにミカンと花を持ってきてたけど、宇宙期が帰ったあと母親はミカンを抱きしめるんだよね。お母さんモテちゃって誰が父親かわからないって言ってたけどもしかして宇宙期はゼウスの子供?お母さんはヘラ?ゼウスはヘラと結婚する時オレンジの花を贈った。宇宙期は軍神アレスなのか。
磨多井と知花が結ばれるのって、磨多井がオリオンで知花がアルテミスってことだよね。知花がシルバって読み方なのはアルテミスがモチーフだからだ。

生と死と善と悪と罪と罰と力と欲望と愛とグッチャグチャにして最後あっけなく元通りに戻して、次またテストしますからねって何も起こる前の朝に戻ってきた振りみたいな。
呆気なく死んで呆気なく元通り、でも全部元に戻す代わりに本当に変えたかったことも全部元通り。神話の世界の神様のあり方と一緒なんだなあ。理不尽で上手くいかなくて。でも磨多井と知花の2人が前に進んだから夢じゃなかったんだなって思って、永遠になりたかった磨多井は死んで星座にならずに生きて知花とアダムとイブになるのか。宇宙期の母は元に戻ることで死んでしまったけど。

演者の方の感想としては、生者が伏して、死者が踊るように旋回するの、とても美しかった。死者の方が自由に見えたけど本当は自由じゃなくて、大きな流れに逆らえずに流されてるだけなんだよな。でもそれが自由に見えちゃったんだ。綺麗にくるくる回ってて。
苦しんで操られて朦朧とした顔つきで真っ白な羽を生やしたアンダソン役の森田桐矢くんとても美しかった。おバカ高校生の時と、ペガサスの名前に乗っ取られている時のギャップが好きだった。
あと磨多井役の原嶋元久くんの、知花への告白シーンでの「毎晩罪を犯してる」ってのが劇中一番好きなセリフだ。
最後のクリシュナ様のところ、怖くて美しくてゾッとした。でも考えてみると、ずっとスイサンズのことを試すような誑かすような選択を迫る言葉を言い続けてきたから納得もした。

エンタメになってない説教なんて金払って見に行きたくないけど、ポセイドンの牙は娯楽になってて裏側に現代社会へのメッセージもあってバランス良かった。すっごくたのしかった!