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One on One 34th note『face-to-face』観劇感想

2022年9月27日、新宿シアタートップスにて『face-to-face』を観劇。

相変わらずミュージカルの魅力ががてんこ盛りで最高!前作back-to-backに引き続き、コムロ探偵事務所のドタバタ物語がめちゃくちゃ楽しかった〜!!!小さい箱でミュージカルの魅力がギュギュッと詰まりまくった作品を浴びるの最高に幸せだな〜と改めて思った。

あと前作でも思ったけど、休憩なし2時間一幕物で怒涛の歌とストーリーをラストまで突っ走る感じがすごく良い。演者は休憩なしって大変かもしれないけど、見てる自分にとっては物語と同じテンションで最後まで突っ走れる感じが楽しい。

以下ネタバレ感想

face-to-faceは、有名な推理小説家の孫から、祖母が筆を折る事になった責任を取って、祖母の未完の遺作を一緒に完成させてほしい、という依頼が舞い込む所から始まる。中身はやっぱりドタバタ破茶滅茶ハイテンションコメディで笑いに満ちてて、でもほんのり寂しさもあったりして。推理小説家が筆を折ったのは、自分の中でかつての情熱が薄れていくのを誤魔化しながら生きてる事を、熱心な読者のコムロに真正面から指摘されたからだった。笑顔で筆を折ることにした推理小説家が、あの頃の自分みたいな情熱を持って推理小説を書いてるワダの作品を読んで、コムロ探偵事務所の生き生きとした描写を目にして、また書きたいという情熱を復活させたというのもすごくグッと来てしまった。

コムロの自分の納得を一番大事にしてるところが好きだな〜って思う。性格には難ありな所があるけど、この作品の登場人物はみんな、自分の納得を大事に生きてて、納得できない事にはちゃんと「はあ?」って言うところが好き。

コムロ探偵事務所の面々は、誰も見ている側の思惑通りになんてならない強度があって好き。性格が良いんじゃなくて"良い性格"をしてるキャラクターだらけで、良い所だけじゃなくて嫌な所もあるし見えちゃうから、正直リアルで知り合いだったらちょっと嫌かもって感じのキャラばかりだけど、嫌な所もチャームポイントかもって思わされちゃって好きになっちゃう。そこは脚本の力でもあり全力で演じてる役者の力なんだなあと思う。くっそ態度悪いのとか、それに対して本心では結構むかっ腹立ってて思わず出ちゃうんだなとか、思いの外腹黒いこと考えてんだなとか、逆にそこは全然気にしないの?とか、本気で悪意あんのか?ってくらい茶化したりとか、血管ブチ切れない?っていうテンションの乱高下を生身でぶつけ合っててすごい楽しい。

今ここで起きてる芝居と推理小説の劇中劇とで、キャラクターの目まぐるしい演じ分けとそのギャップが贅沢だった。

今回の新登場のお二人、アサガリク(野口隼さん)とカネダイチ(鎌田誠樹さん)も濃いキャラクターで面白かった!

有名な推理小説家を祖母に持つアサガリク、初っ端に何やらシリアスな雰囲気で登場したもんだから、現代の闇的なSNSでの誹謗中傷に思い悩む繊細な感じで来るのかと思いきや!?顔も名前も知らない赤の他人からSNSで何言われようと全然気にしない、むしろ七光りも好都合とばかりに利用してやる貪欲さがあって、思い悩むのは実はぜんぜん別の私情のせいだったのめちゃくちゃ笑ってしまった!

カネダイチの胡散臭さたまらなかった〜。身振り手振りに声の抑揚、表情筋も動く動く。キャラクターのフットワークの軽さがすごく伝わってくる。警察から探偵になって弁護士とミステリーコンサルの二足のわらじ、本人は絶好調のときに惜しまれつつ辞めるのがいいし下降線をたどるのが耐えられないって器用貧乏みたいな言い草だけど、どれもちゃんとモノにしてるのがすごい人だった。

田村良太さんの発明家マエクラが相変わらずすっごい素敵なんだよな。歌うように喋って、話すように歌う、全部が一体でシームレスで。たぶんいつでも血や肉体に音楽が流れてて、芝居してても台詞喋ってても全部歌ってるしリズムが見えるようで、見てても聞いてても全部気持ちがいい。コムロとの出会いを語る時のおもしろがってキラキラがほとばしる感じよかった。

藤原祐規さんのコムロが相変わらず仏頂面で憎たらしくてネチネチしててブチ切れてはスネ倒してて本当に愛しい嫌なヤツで最高!大好き!前作に比べてデレ要素が増えてて可愛さも増しててニヤニヤした。コムロ探偵事務所の面々のこと、良い仲間って素直に思えるようになっててフフってなった。

新正俊さんのワダ、前作に比べて強かでふてぶてしさが増してて最高!前作での初心さはどこに行った?という貫禄のある歌と振る舞いで、この作品のキャラクター全てに共通するのは自分の納得に忠実であるって事だな〜と思った。その最たる体現者はコムロなので、そのワトソンであるワダがこうなのは必然だ。

今回出張中のアンドウアイリ(法月康平さん)は声だけの出演ってことで出番あまりないのかな〜と思っていたら、電話口での台詞だけじゃなくてちゃんと歌まで歌っててびっくりした(笑)声だけでも良いキャラ出てて好きだった!

小林優太さん演じる、ニコニコ朗らかでマイペースなんだけど、案外ノリが良くてコムロ探偵事務所をアトラクションかなんかみたいに楽しんでる結構図太いハトムラ坊っちゃん良かった。

千田阿紗子さんのグレコ、もう抜群の安定感、先人切ってチャキチャキ盛り上げ一瞬にして舞台上の熱量を上げてくのが見ていて気持ちいい。振り回されもするが、ただで振り回されてたまるかってタービン回して自分を上げてく気風のいいキャラクターが大好き。

前作back-to-backに続き、face-to-faceもものすごく楽しかった!背中合わせの関係も、面と向かって本音ぶつけ合う関係も魅力的で、まだまだコムロ探偵事務所の物語が見てみたい。