インクルージョンボックス

私の内包物をつれづれと

私はテニミュ4th青学vs不動峰の誕生を全力で祝福する

ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン青学vs不動峰、生まれてきてくれてありがとう!

テニミュは基本的にたくさん見るししょっちゅう感想変わるしツイッターでつぶやいて満足してるからあんまりきちんと文章化することがないんだけど、すこし思うことがあって感想ではないかもしれないけど書き残すことにした。

※予想以上に多くの人に読まれたので一応注意、まだ見てない方はネタバレだらけの感想なので自衛してください。

これは私のために書いてる文章だ。言葉は残すことにのみ特化したものだと思っている。脳内に過ぎったもの、心が感じて動いて思った事を、関連する物事と紐づけ正しく過不足なく形容するには何もかも足りないし、言語化した途端に形も感触も変わる。私という日本語話者が個人的に日本語で考えて書いてるだけで、理解や共感なんてものは自分自身とすら安易にできるものじゃないっていうのを当たり前の前提として書く。

すげー端的に結論を一言で言うと、私はテニミュ4thの誕生を全力で祝福してる。おめでとう!ありがとう!大好き!

今回初日の公演を見れなかったんだけど、初日を見た人たちの感想「爽やか!新しい!最高!楽しい!好き!」とかと一緒に「私は好きじゃない」が流れてきて超いいなと思った。

中には主語のでかい感想がちらほらあって、テニミュってすごく愛されてるなと思う。「私」という主語を使わずに(ファン全体の)「需要」を主語に話をしだす人がこれだけ出てくるんだなと。で、私はどっちに転ぶかなと思ってたんだけど、めちゃくちゃ楽しかった!

テニミュの始まりを、原作最終巻に載ってた小説の卒業式の場面から始めるのが新鮮すぎて目からウロコ、物語の捉え方が全く違ってとても画期的だった。リョーマが青学メンバーと全国優勝してそれぞれの未来へ向かう、そこへ到達するための物語の始まり。まぶしい未来の春から、出会いと始まりの春を回想し、物語に入り込んでいく。原作が完結していてテニミュももう4周目で、原作の続編である新テニスの王子様テニプリよりも長く連載されてる時代になって、新テニミュもある今だからできる始め方だと思った。制作陣一新がめちゃくちゃ効いてる。

この真新しいテニミュ、賛否両論あるけど(まあ賛否がない時なんぞないが)私は未来を感じた。今までやっていたようにテニスボールをピンスポットで表現しなくたって、テニミュはできるってことだ。

試合のラリーをピンスポットで表現するという演出は、斬新で美しくて多くの人が圧倒されるものすごい大発明だった。それは間違いない。

でもこのピンスポットでのラリー表現は専任担当者(2018年当時二代目の方で50代)でなければできない特殊技能で、あのスピード感を出すには相当の運動能力と腕力が必要、腕への負担は相当なもので公演後はアイシングするほど肉体を消耗する方法だと明言されていた。この演出は上島先生の頭の中ではこれがなければ成立しないというほどコアになっていて、先生たっての願いで行われてた。(off stage vol.12より)これを読んだとき、テニミュ終わっちゃう時も近いのかなと思ってた。

でも、それがなくてもテニミュはできるんだ。

テニミュ100年続いてくれと常々思ってた私は、持続可能なテニミュになったのは未来だし希望だ!ってすごく嬉しかった。ピンスポット演出がいつかどこかの公演で、途中でなくなったのだとしたら、照明さんが身体壊したのかなって考えて私が純粋に楽しめなくなっちゃうから。テニミュ4thはテニミュの持続可能性を大幅に広げたところが一番すごいと思う。その結果、めちゃくちゃ原作を大切にストーリーを紡いでるところも好きだ。セットや映像演出やSEも新鮮な驚きがたくさんで楽しいし、ランキング戦の乾先輩がかっこよくて最高だし、これから先も続けられる方法を模索して作られてる感じがあってすごく好きだ。

テニスの王子様が好きな私としては、今作の大人の新キャラである井上守の存在が、新テニのテーマである個人個人がどうテニスと向き合って生きるかの一つの形が表現されていていいなと思う。月刊プロテニスの記者であり会社のテニス部でテニスをやってる大人という、プロにならなくても大人になってもテニスを続けられる形。王子様たちの未来になるかもしれない形だ。井上守を演じている北代さん(かつて橘さんを演じていた)は今回、井上守以外に不動峰の理不尽な顧問(とタカさんのお父さん)も演じていらした。青少年たちのテニスに夢と希望をもって守ろうとしている大人と、不動峰の幼くも優秀なテニス少年たちの芽をなんの感慨もなく踏みにじる大人、とても対比的、真逆の性質のキャラクターを一人の役者が演じるのはとても演劇的で面白かった。

不動峰パートの分厚さが最高。橘さんと不動峰の子たちの救い救われる相互関係がとても伝わってくる。橘さんが不動峰の子たちを救って、そのことが橘さん自身を救ってるという絆の形。橘さんがもう一度テニスという夢を手にするには不動峰でなくちゃだめだったんだよな、千歳から奪ったと思い手放した夢を。1幕ラストの不動峰の歌が良すぎてウルウルする。明日を望むことをテニスをしたいってことを夢を諦めないことを許してほしいって懇願する少年たち、自助で生きてる子達に感動してんじゃねえって感じだけど。

まぶたを負傷してベンチで治療受けてるリョーマをじーっと見てる橘さんが、胸の内に苦悩が渦巻いてそうに見えて、千歳のことを、親友から奪ったテニスのことを思ってるんだろうなと感じた。伊武がリョーマからテニスを奪うことにならなくて良かった、トラウマが更に深くなる所だった。でもその前の鉄の波動球のときは「壊れたものはもう一つある(タカさんの手首)」とか言っててやはり橘桔平はラフプレー気味の選手だよな〜ってなった。

Force of gravityが曲も歌詞も良くて好きだ!ツイッターテニミュ版Tricolorって言われてたのも良い。宇宙のイメージな映像に歌と振り付けで、天体同士の引力で出会って惹かれ合いここに集った、導かれたキャラクター達、チームを表現してる。爽やかでカッコよくてテンション上がる!

テニミュボーイズは本当に芸達者ですごい。佐々部や荒井やマサやんや九鬼や玉林ダブルス泉と布川や不動峰の先輩たち。新キャラという飛び道具は3rdで出し切ったと思ってたけど、4thは主要キャラ以外にも幅を出してきた。キャラクターの関係性が動くとキャラ造形にも影響が出るからものすごく面白い。

4thシーズンの三浦香さんの脚本演出で走り抜けたら(まだルドルフ公演が三浦さんかもわかってないのに気が早いが)5thシーズンはまた脚本演出を変えて公演やってみてほしい!私にとって上島先生は越前南次郎と同じだ。その天衣無縫は、あまりにも暴力的に輝かしくて強烈に眩しいけれど、もう絶対の存在ではない。他の人の、天衣無縫を選ばないテニスとの向き合い方を見たいし、例えばその表現がドイツの矜持の光であったり、ダブルスの同調や能力共鳴でもいい。テニミュにはまだまだ無限の可能性があるって、この真新しいテニミュ4thが教えてくれた。

テニミュにおける楽曲の引き継ぎって所謂ファンサービス的な部分もあったと思うんだけど、ノットフォーミーなファンサだったから、私にとって全曲新曲のテニミュ4thが楽しいのは当たり前かもしれない。新曲や引き継ぎ曲で一喜一憂する必要が皆無だし、なんでここの演出ずっと変わらないんだろうとか余計なこと考えず目の前の公演に向き合えてノンストレスだった。当然ながら今までのテニミュの楽曲自体は大好きだし(シャカリキファイトブンブンがかかればオートで振り付けできる)思い入れのある曲もたくさんあるけど、いろんな演出家が今までの"テニミュの楽曲"とか、あと"テニミュのピンスポラリー演出"とかの柵なくどんどん別視点のテニミュを作ってくれたらめちゃくちゃ楽しいだろうな〜って思う。

今までのテニミュ(という形容はあまりに雑すぎるが)は、許斐先生の原作漫画ではあえて見せずに隠されてた部分を強制的に表舞台に引きずり出した。たとえネットの向こうの暗闇でも客が双眼鏡でその表情まで覗きあぶり出して楽しむ。あらゆる座席で連日通って双眼鏡で定点して日替わりを毎日レポして、みたいな娯楽性、消費の仕方を生み出して提供してきたけど、セットを作り、画角を狭め、見せる場所見せない場所を区切ったように見えるテニミュ4thではそれがやりにくくなったからギャップはある。一緒に見た友達が「何度も通う必要性がなくなった」と言っていた、それはその通りなのかもしれない。

テニミュ4th今まで以上にすごく『テニスの王子様』だなって思う。一緒に見た友達が「没入感が薄い」って言ってたけど、俯瞰の視点がある。熱すぎない、どこかサラッとした感じは原作っぽさだよなあと思う。真新しいテニミュを作ろうとした時に、まず第一に原作に立ち戻ろうとする姿勢は今までのテニミュと一緒なんだなあと思う。

私は今回12公演分のチケットを取った。今は3公演見たあとで、残り生で見れるのは9公演、あとは大千秋楽のチケットがないので配信を見る予定だ。これが多いのか少ないのかわからないけど、まだまだもっと見たい気持ちがある。お披露目会を見に行ったときにテニミュキャストと制作陣から感じた、絶対にいい公演にする、期待に応えるという気迫みたいなものを、私はかけらも裏切られてない。ブラッシュアップの余地は多々あると思ってるけど、シンプルにテニミュってめちゃくちゃ楽しい!

私はテニミュ4thの誕生を全力で祝福する!

テニミュ4thが、どうしても個々人の愛してきた個々のテニミュとギャップがあって、今すぐに受け止め切れない人がいるのは知ってる。それと同時に私も見ていくうちに解釈違いだー!って暴れ出す可能性だってあるのも知ってる。でも、例えば私が解釈違いって暴れ出した時に、きっと他の誰かはテニミュって楽しい〜!って天衣無縫になってるかもしれない。いつか私が暴れ出したら、そのテニミュを愛してる人が愛を叫んでてほしいし、今のテニミュをうまく愛せない人がいたとしても、今が楽しくってたまらない私は全力でテニミュ4thを祝福する。

ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン、青学vs不動峰、生まれてきてくれてありがとう!

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