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私の内包物をつれづれと

ハイロー初心者のオタクが初めてHiGH&LOW THE WORSTを見に行った感想

私はもともとテニスの王子様のオタクなのですが、
下記ツイートをきっかけにハイローを1つも見たことがないのにHiGH&LOW THE WORSTを見に行ってみました。


きっかけのツイート主であるすどうさんへ映画の感想をウェブ拍手から送ったところ、下記のようなご提案をいただき、映画の感想文を公開することにしました。



きっかけのツイートや以下の文中に出てくる天衣無縫の極みについて、テニスのオタクでないとわからないと思うのでざっくり説明します。

天衣無縫の極みとはテニスの王子様における最終奥義であり、勝ちへの強すぎる固執やしがらみを超越し、心身が純粋にテニスを楽しむ気持ちに満たされることでその人の最上級以上のポテンシャルが発揮される状態。
テニスの王子様では主人公の越前リョーマが最後にこの奥義に到達するが、かつてそこに到達した父 南次郎によるとそんな奥義はじつは存在せず、子供の頃はみんな天衣無縫だったとも言われている。私個人の解釈として、天衣無縫はテニスの王子様において最大の作中是の象徴であると考えているので村山くんに興味が湧いたという次第。現在連載中の新テニスの王子様においては天衣無縫とは別のテニスとの向き合い方をしている子達もそれぞれに是である物語が描かれている。)

前置きが長くなりました。以下すどうさんへご了承いただき、ウェブ拍手へお送りした感想文を原文のまま推敲せず載せています。

先日、すどうさんが村山くんのことを天衣無縫だとツイートされていて気になって見に行ってみました。(テニモンが名前を言ってはいけないあの人も出ていないと言及されていたので安心したのもあります。)

初めてハイローを見て、暴力表現も比較的マイルドでカメラワークやアングルへのこだわりも面白くエンタメとしてとても楽しかったです。勝手にもっと怖い作品群だと思っていたので、ケンカに明け暮れる彼らのなかにも守るべき秩序があり、それでも子供であることが無垢で無知であることが、その弱さや歪さがかわいそうだったり愛しかったりして、たくさんの人が夢中になってしまうのもわかるなあと思いました。

最初に感じたのが、村山くんは、この映画の世界の内側からも、フィクションとして作り上げている外側からもとても愛されているのが伝わってくるような映画だと言うことです。鬼邪高の頭としての彼が学校という小さなコミュニティの中ではあるものの圧倒的に周囲から認められ畏怖され尊敬と愛を集めていること。そして作品の中で主役を差し置いて大きな成長の物語を与えられていること。それが高校生という子供が多く描かれる作品の中で大人になることに対して希望のある形であること。彼はものすごく愛されているのだなと思いました。

今作の主役であろう花岡くんも同様に愛されるキャラクターではあるもののその方向性が少し違っていて、村山くんという全日の子たちに比べ既に大人に近い立ち位置のキーキャラクターがいることで、勢いよくまっすぐな快活さ未熟さ稚さが際立っていたなと思います。村山くんをすこし彷彿とさせるものの、似て非なる存在としての花岡くんが面白いなと思いました。なんというか彼はものすごく自分の感情に素直で、近くの人の懐にするっと入って警戒を解いてしまう、相手に力を貸してやらなきゃって思わせる才能がある。村山くんはあまりわかりやすく心の内を表現しないというか、本人は隠してるつもりがなくても他人からは何を考えてるのか見えにくくてそれが謎めいて怖く見えるタイプで(実際本人はあまり深く考えてないかも)自分の好きなモノや特別なもの以外割と低温でフラットでマイペースな印象を受けました。

すどうさんを始めいろんな方から話題沸騰の轟くんもかなり愛されているキャラクターですね。「轟一派」という名前を冠していてもどこか孤立無援で戦っているように見え、セリフも会話ではなく独り言めいていた彼が、作中で目に見えて他人に対する態度が軟化し、対話や共闘の姿勢を自ら取るようになった。作中で一番と言って良いくらいものすごく変化の大きいキャラクター、なにより村山くんが一番に彼を気にかけている。轟くんのことを他の子達よりずっと甘やかして目をかけて期待している。村山くんが轟くんにだけ特別に2度目(であってますでしょうか)のタイマンを受けてあげたり、彼に今足りないものへの自覚を促したり、村山くんはどこかで自分の後に頭になるなら彼がいいと思っていたのかなと思いつつ、轟くん自身は頭になる事より村山くんに勝つことを重視していてすれ違っているなとも思いました。でも、映画の終盤の轟くんは村山くんが何を自分に与えたかったのかもう分かっているんじゃないかなとも思いました。彼らのタイマンのシーンめちゃくちゃカッコよかったです。狂気じみて見えるくらい楽しそうに喧嘩する村山くんと対照的に、ものすごく必死に食らいついていく轟くん。たしかに村山くんは天衣無縫の極みにたどり着いていたように感じました。そりゃあの時の轟くんは勝てないはずだと。前後しますが、村山くんからいきなり肩を組まれてビクッとする轟くんが可愛かったです。

誠司の学校での教師との会話のシーン、あれは誠司なりの自分がどう生きていくかという戦いで胸が熱くなりました。花岡くんやオロチ兄弟が必死に新太を止めるために、自分達らしくまっすぐに喧嘩をしているのと同じように、誠司も自分の戦うべき場所で戦っている。無理やり矯正されることなく素直に曲がったきゅうりとしての誇り、一見曲がったきゅうりのように見えない誠司の劣等感のような、鬱屈した感情や葛藤も見え隠れするような気がして、一度見ただけでは飲み込みきれなかったです。彼はこれから曲がったきゅうりを許さないような、存在を認知すらしていないような人達の巣窟にどんどん向かって行くのでしょうし、かなり険しい戦いを始めたんだなと思いました。

ハイロー初心者の初見で一度見た限りなのでとんちんかんな感想もあるとは思いますが、思い立って見に行って良かったなと思えるエンタメ作品でした。完全に食わず嫌いでした。

もしツイートされていたように、すどうさんも何か見てくださるようでしたら、蒼穹のファフナーを見ていただきたいです。今YouTube公式チャンネルでファフナーシリーズを全話順次公開中です。ただロボットアニメなので戦闘や戦争表現があり、すどうさん的に視聴アウト判定の作品であれば見なくて大丈夫です。一応下記に、メンタルに打撃の少なそうなものをふたつセレクトしています。もし大丈夫そうで見てくださったなら、見たよ!とだけツイートして頂けたらうれしいです。

◆劇場版「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH
こちらは第一期と第二期の間の劇場版です。一期の展開を知らないとストーリーを掴みにくいですが、わからなくても映像美と戦闘シーンがカッコいいです。[約1時間半]

蒼穹のファフナーEXODUS第9話
こちらはシリーズ第二期の主人公と裏主人公の共闘シーンが初めて描かれたお話です。前後の展開がわからなくても、映像美と戦闘シーンの迫力が楽しめると思います。
当時ニコ生アンケート満足度98.8%で歴代1位を叩き出しています(後に19話で更新しました)[約25分]

 

◆追記

すどうさんがファフナーを見て下さって、とても真摯な感想まで書いてくださいました……!!!震えました(涙)
ファフナー初見でここまで深く理解していただけるなんて、嬉しくて友達に夢じゃない!!!夢じゃないよ!!!ってLineで自慢しました。

 

sdppp.hateblo.jp

 ファフナーのオタクとしてザワを表現すると、村山良樹という人が大人になることを受け入れ鬼邪高を出ていく選択をしたことこそ、彼の祝福なのだと思います。轟くんもまた、村山くんと同じように変化していく自分を受け入れ始めた。彼の、彼らの祝福の先の物語がまた続いていくことを願います。
ありがとうございました。