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Endless SHOCK 2019 観劇感想

2019年3月27日、帝国劇場にてEndless SHOCKを観劇。
一年ぶりのSHOCK、本当に楽しかった。SHOCKを見ると、世界が鮮やかになっていく魔法を見ているみたいで本当にしあわせ。普段いろんな舞台見に行くけど、そういう魔法があるんだって、こういう気持ちになりたくて、そういう信頼を叶えてほしくて劇場に行くんだよなあって、観劇を好きになったときの気持ちを思い出す。
以下ネタバレ感想です。

 

Endless SHOCK2019は、ナイツテイルを経た堂本光一という人が、どんなふうにSHOCKに戻ってきて、どのようにそこ存在するのか、どのようにSHOCKの世界をブラッシュアップするのかとても楽しみにしていた。そして大筋のストーリーは変わらないながら、かなり大幅な改変があって、そのどれもが個人的に納得の行くものだったのでものすごく楽しめた!

以前のSHOCK感想はこちら

 

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ここもあそこも削るのかと思うくらいに大胆に削ったところは無くなったことでかなりスッキリわかりやすくなり、ある意味見せ場の一つだった派手なシーンの「ジャングル」がシンプルでしっとりとした新曲と表現方法に変わったのも、ストーリーに寄り添ってコウイチ自身の苦悩を感じ取れるとても良いシーンだと思う。セリフもいろいろ変わってて、「それがお前のShow must」go on か」っていうセリフへの改変はコウイチがライバル役を頭ごなしに怒鳴りつける感じではなくなったのが、良いなあと思った。

あと一番嬉しかったのは、短いけれどリカの歌が増え、リカのシーンが増え、彼女の人となりをより一層感じ取れるような表現が増えたところ。今までのSHOCKはてんこ盛りすぎてリカの描写が入れられなかったのかもしれないけど、描写が少ないせいで散々パセリ(料理の彩り要員的な)扱いしてきたのに都合のいいときだけ物語に必要な役割を当て込んできてるように見えてしまうことが残念だったから。今回の変更で、今までのリカも好きだったけどリカという役自体がとても人間味のある存在として感じられて嬉しかった。梅田彩佳さんのリカ、とても好きだ。

シェイクスピアの劇中劇シーンもかなり改変されたけれど、ライバル役のウチがみている悪夢だと言うことが今までより顕著に分かりやすくなっていた。(以前一緒に観劇した友人は、この悪夢の劇中劇シーン置いていかれてしまっていた)ウチがどんなふうに罪悪感に苛まれ、どんなふうに自分を責めているのかが痛いほど伝わってくる。夢の中でカンパニーの仲間たちのセリフも自分のセリフも全てがシェイクスピアのストーリーをなぞっていて、つまりコウイチがやりたがったシェイクスピアの芝居をウチは否定していたのに、こんなふうにストーリーやセリフを夢に見て諳んじられるほどに読み込み勉強したんだということが伝わってきて、かわいそうで仕方がなかった。

去年はライバル役のユウマのショーシーンが変更になっていて、ストーリー上でライバル役自身の納得いった演出やショーなのか?コウイチが独断でナオキと共演させ、ユウマ自身は納得できていないのでは?っていう疑念が生まれて悲しかった。今年のライバル役のウチは去年ほど強烈な疑念には駆られずもう少しマイルドな印象だった。ウチ自身がナオキとのパフォーマンスを楽しんでいるように感じられたのもある。(去年はそれを感じ取れる余裕が私になかった)逆に、オンブロードウェイの華やかな舞台そのものがコウイチの納得のいくもの、やりたい事ではないのでは?という疑念の方が強くなって悲しさ倍増だった。この疑念をこんなに強く持ったのは今年が初めてだった。「ジャングル」のシーンに変わって新しく入った新曲の、コウイチがメインのバックステージシーンは目が足りなくなるような派手さもハラハラするような緊張感もない変わりに、コウイチ自身のまばゆいスター性の輝きと、それに影を落とす苦悩がいっそう見えてきて胸に迫るものがあった。

去年変更された、コウイチが自分側についている仲間のひとりに、何があってもライバル役についていてくれと託すシーン、今年もあった。このシーン個人的にとても辛くて去年はどうしてこんな酷いことをするのかと思ってしまったけど、今年はその印象が少し和らいだ。コシオカとユウマでなく、マツザキとウチだったから、演じる人やその時の空気が違うからかもしれない。コウイチが自分からかけてやれない愛情を誰かに託してやらせるということ自体はかわらないので、辛く感じるのも変わらないけど、マツザキの柔らかく温かに感じる人柄やウチとマツザキの間がとてもイーブンに見えるから印象が違うのかもしれない。

実はこの機会に「夜の海」のシーンが以前の演出に戻らないかな?と期待していたのだけれど、当然ながらありえなかったなあ。今の演出、わかりやすいのはわかるんだけど、言葉で語らせすぎていて少し気恥ずかしい。言語化させすぎず、以前のようにみんなで心をこめて一糸乱れず踊るだけのシーンの方が個人的には好きだった。でもカンパニー全員の思いが高まってひとつになっていく中で、コウイチが満足げに星を掴んで消えていく、その高まりの部分を観客が取りこぼしてしまうよりは、わかりやすくしておく方が良いというのもすごくわかる。

ここ数年、無意識で目で追っていることを実感した福田悠太くんと寺西拓人くん、今年も思わず目で追ってしまった。福田くんはもうずっとコウイチの腹心でコウイチへの思いも人一倍強く伝わる演技がとても好きだし、寺西くんはダンスが特に好きなんだけど、今年は役どころが大きく変わって感情の振り幅が激しく演技面でもとても目を惹いた。

内博貴くんのライバル役はじめて見たのだけど、最愛のライバル役である屋良朝幸くんとも、去年観劇した中山優馬くんとも違って面白かった。技術面での拮抗からの自負や、格好つけたり背伸びしたりというのとはまた違うライバル像だった。これまで梅芸でのSHOCKを見たことがなかったので比較できないのだけど、演出面での変更とウチというライバル役がいる今年のSHOCKが、一番コウイチの苦悩を強く感じた。

コウイチが才能あふれるスターであることは幕が下りるまで変わらないけれど、コウイチが物語の主人公でいるのは一幕までで、二幕からはウチをはじめとするカンパニーのみんなが物語の主役になっていく。そういう主人公交代というか代替わりというか、物語が次のステージに進んでいく中で、主人公だったコウイチが未来に行けず取り残されていく悲しさと、自分たちの夢をお前たちの夢として信頼できる仲間に託せたことの希望を、ラストの眩しい光のなか全員で歌う荘厳なシーンで描くことが毎回カタルシスを与えるんだなあと思う。観劇するたびEndless SHOCKの物語はなんて残酷なんだろうと思いつつ、ラストが完全なるハッピーエンドではないけれど希望で終わることが救いでもある。幕が上がる瞬間のワクワクと胸が高鳴る気持ちをまた味わいたいと、何度でも思う作品だなあとあらためて思った。

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